本記事は筆者独自の見解です。漢字に親しみを覚えていただければ幸いです。
「殊」は刑罰の中でも特に惨い刑から成り立った漢字
成り立ち | 形声文字 |
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部首 画数 | (部首) 歹 (かばねへん・いちたへん・がつへん)(画数)10画 |
読み方 | (音)シュ (訓)こと |
学年 | 中学生 |
漢字検定 | 3級 |
「殊」はことに、特に、ことにする、たつ、断ち切る、殺す、死刑にする、普通と違う、などの意味があります。
「殊(こと)にすぐれている」などと使われるように、他とくらべても特別秀でているような良い意味で使われることが多いですね。
しかしよく見ると、屍(しかばね)と同じで、へんに「歹」が入っています。
実はこれは人の死を意味し、崩れた骨を表している漢字なのです。
どうして現在の使い方と違うのか?
なにやら不穏な空気が漂う「殊」という漢字の成り立ちを見ていきましょう。
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漢字の成り立ち「殊」
(形声文字)
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「殊(しゅ)」は意味を持つ「歹(がつ)」と音を表す「朱(しゆ)」が組み合わせて作られた形声文字です。
歹は人の死体の胸から上が残っている象形、朱は木の中心に一線引いた象形を表しています。
一方朱は、切り株で見られる年輪のことで、年輪は外側は茶色が薄く中心に向かうほど色が濃く赤くなっていきます。
その中心の色を「朱」と呼びました。
朱は木に一本横の線を付け加えることでできた漢字で、横に切る、「断ち切る」というイメージができます。
死を表す「歹」と横に真っ二つに断ち切るイメージのある「朱」で何を表すのかというと、人間が頭と体を真っ二つに切断されているという情景です。
古代中国には身体を真っ二つにする死刑の方法があったそうで、それは上半身と下半身が切断されてしまうものでした。
それは見るに堪えない程悲惨な状況だったでしょう。
このように他の刑とは違う惨く悲惨な刑は特別だということで、他とは一線が引かれることとなったのです。
このことから「他とは違う」「特別」という意味で使われるようになりました。
「殊」を使う単語には次のようなものがあります。
「殊勝(しゅしょう)」…けなげなこと、感心なこと。またそのさま。
「特殊(とくしゅ)」…普通のものと異なっていること。
平均的なものを超えていること、特別。
「殊更(ことさら)」…考えがあってわざとすること。
単語になると残酷な意味よりも際立っていたり優秀だったりする「ことに」の意味に近い使い方が多いようですが、漢字辞典では「殺す」「死刑にする」という記述があります。
しかし成り立ちでや部首の意味でも分かるように、まぎれもなく「殊」という漢字は死を意味する漢字ですし、しかもかなり惨い成り立ちからできた漢字なのです。