本記事は筆者独自の見解です。漢字に親しみを覚えていただければ幸いです。
「善」は身近な存在を裁判の生贄にする習慣から成り立った漢字
成り立ち | 会意文字 |
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部首 画数 | (部首) 口 (くち・くちへん)(画数)12画 |
読み方 | (音)ゼン (外)セン、(訓)よい |
学年 | 小学6年生 |
漢字検定 | 5級 |
善をよく見ると「羊」という漢字が入っているのが分かると思います。
その通り、善の成り立ちには羊が欠かせません。
古代より人々は羊を犬と同じくらい身近な存在であり、役に立つ家畜として、さまざまな用途で使用していました。
羊の漢字の成り立ちは、羊の可愛らしい顔立ちと2本の角がルーツになっています。
可愛らしい羊は、古人にとって美的にも良いとされ、めでたい存在でした。
そのおめでたい「羊」に、沢山の言葉という意味を持つ「誩」が組み合わさってできたことから、「めでたい言葉が沢山」=「善い」となったのです。
しかしながらこんなよい意味でしか使われない「善」という漢字には、もう一つ悲しい成り立ちがあるとも言われています。
可愛がられていたからゆえ、だからでしょうか。
成り立ちを見ていきましょう。
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漢字の成り立ち「善」
(会意文字)
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「善」の元の字は「譱」。
羊の首を表す「羊」と沢山の言葉という意味の「誩」が組み合わさってできた会意文字です。
前述した通り、羊は人間にとって身近で可愛がられており、時には栄養源として、衣類として使われていました。
一方、羊は裁判の時に生贄としても使われていました。
神事には、神に捧げる価値のある動物として生贄としても使われていきましたが、裁判にも欠かせないものでした。
羊は神の異形にもなる動物と言われていたからです。
古代中国では裁判の際に原告、被告、両者が羊を差し出すその様子が「譱」です。
「羊」の左右に並び立つ取っ手のある刃物と口、これが「言」、「言」が原告と被告を指しています。
これは裁判での証言を指していて、嘘偽りのない発言をすることへの誓約となりました。
羊を差し出すということは、裁判というものが神にも通じ、裁判の結果は神が示した判断であるという考えになります。
神が示した判断は常に正しく、よきなるものとされていたのです。
今も昔も裁判というものは神聖な物であり、その判断は絶対的なものであったのです。
いけにえ(羊を差し出し裁判をする)を出して、両者が納得する=「善い結論を求める」という意味に繋がるのです。
「善」の文字の意味に、よい、正しい、優れている、たくみ(上手)、仲むつまじい、ただしい、親切、などがあるのも成り立ちから考えれば納得のいく意味ばかりです。